2013年5月12日日曜日

人工内耳体験談発表全文

耳の日の講演会で発表した体験談を公開します。

皆さんこんにちは、滝です。
コクレア社の人工内耳を装用しています。
人工内耳を装用して2年目に入り、これまでの体験から人工内耳の可能性を探りました。



体験談では自己紹介の後に「聴こえ方」「電話」「音楽」について紹介していきたいと思います。



自己紹介です。




・乳児期
母親が妊娠中に風疹に罹ったため、軽度の難聴児として生まれました。
2歳で補聴器の装用を開始し、聾学校で言葉の聴き取り練習も始まりました。

・小児期
60dBに低下したそうですが、地元の普通小学校に通い普通に会話も電話も可能でした。

・思春期
中学2年生の時に急激に聴力が低下し、会話がままならなくなりました。
この時から電話ができなくなりました。

・青年期
会社に入社してから筆談による会話に限界を覚えていました。
電話ができないのは不便です。
このころから電話ができるようになりたいと強く思うようになりました。



聴力の推移を年代別にグラフ化したものです。
人工内耳は両耳90dBから適応ラインです。



私の場合、思春期に90dBと早い段階から適応であることが分かります。
このときは1990年でしたが、まだ人工内耳は一般的ではなく保険適用になっていませんでした。



青年期に入った1994年から人工内耳が保険適用になりました。
ただ当時は人工内耳は機械的に聴こえるという声が一般的だったため、ためらいがありました。



しかし、近年は人工内耳の性能が向上したのか、自然に聴こえる人が増えていることを知り、
2010年10月に大学病院で手術に踏み切ることになりました。



次は人工内耳の聴こえ方です。



この背景が何か分かりますか?

ぼやけていますね。
これは100dBの聴こえを視覚化したものです。

100dBの聴こえはこんな風に見えていると思ってください。

100dBになると補聴器では限界があり、言葉はぼやけて聴こえています。
これだけでは何の背景か分からないですよね?
言葉の聴き取りも同じことです。

この後、人工内耳を装用してどのように聴こえが変化していったのか
この背景を使用して説明していきます。



人工内耳装用直後の聴こえのイメージです。
人工内耳を装用して初めて聴いた音は、この絵のように迷彩色のような聴こえでした。
全ての音が「チュルチュルジー」と電子音に聞こえました。
でも聴こえ方がモノクロからカラーに変わり、再び高音が聴こえるようになったのは嬉しかったですね。



人工内耳を装用して6か月目の聴こえのイメージです。景色が見えてきました。
木が立っているのがなんとなく分かりますよね?
この頃になると言葉がくっきり聴こえるようになり、いろんな音の聴き分けができるようになります。



2年経った今ではほぼ自然な聴こえです。この景色のように音の輪郭がしっかりしてきました。
音入れ当初の奇妙な聴こえはもう感じられません。
今は人工内耳の音を「耳」ではなく、「脳」で聴いていると実感しています。



健聴者の聴こえです。
先ほどの景色と違いが分かりにくいかもしれませんが健聴者はより自然に聴こえていると思います。
ただ私の場合は人工内耳の聴こえでも十分であり、すでに補聴器の聴こえを超えています。
また人工内耳の技術も進歩しており、今後、より自然な聴こえになっていくのではないでしょうか?



次は人工内耳と電話です。



人工内耳を装用して電話が出来るようになりたいと思う人は多いのではないでしょうか?
私も電話が出来るようになりたいと思った1人です。
どのようにして電話が出来るようになったのか、今はどのように電話を活用しているのか紹介していきます。

・最初
音入れして間もないころに電話に挑戦しましたが、言葉がほとんど聞き取れませんでした。
やはり電話は難しいと思ました。

・6か月目
ところがオーディオ接続ケーブルを携帯電話に接続してみると言葉が聴き取れました。
電話が出来たことがとても嬉しかったですね。この日から電話の生活が始まりました。

・2年目
今では日常でも仕事でも支障のない範囲で電話を活用しています。
初対面の人だと聴き取りが落ちますが、何度か話しているとだんだん聴き取れるようになります。

私は聴力を喪失してから再び電話をすることはないだろうと思っていました。
しかし、今、こうして電話を手に会話をしています。
人工内耳は暗闇の世界に一片の光を灯してくれました。



先ほど触れたオーディオ接続ケーブルは、iPodやウォークマン、スマホなどと
人工内耳を接続するためのケーブルです。

・使用感
使ってみるとびっくり、雑音のない非常にクリアな聴こえが得られます。

・報告
最近、Nucleus5を装用したという方にケーブルを勧めたところ、
電話ができるようになったという嬉しい報告を頂きました。



次は人工内耳と音楽です。



人工内耳で音楽がどの程度聴けるのか関心がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは私がどのようにして音楽が聴こえるようになったのか紹介していきたいと思います。

・最初
私が最初に新しい音楽を聴いたときは、オルゴールが壊れたように聴こえました。
時計のメロディなど身近なところから音楽が流れていることさえ気が付きませんでした。
これは多くの装用者が通る道かもしれません。

・6か月目
昔聴いた音楽は理解しやすいようで、この頃になると比較的楽しめるようになって来ました。
特に思い出のある曲「翼をください」が昔のまま聴こえたときは感動で涙が止まりませんでした。
最近は私と同じような経験をされる方が増えているそうです。
ただ、新しい音楽はなかなか覚えられませんでした。
歌声は歪み、メロディが雑音に聴こえます。やはり新しい音楽は難しいと思いました。

・2年目
新しい音楽もだんだん理解できるようになって来ました。
今では初めて聴く曲でも歌声やメロディがきれいに聴こえるようになってきています。
ただ、歌詞の聴き取りは1回では難しいようです。何度も聴いて理解する必要があります。

最近では今は亡き本田美奈子さんの曲や地元出身であるアンジェラ・アキさんの曲を楽しんでいます。
今流行のAKB48も?
人工内耳は私に再び音楽の感動を与えてくれました。

音楽は最高のエンターテイメントだと思います。
音楽の聴き取りは多くの困難が伴いますが、人工内耳でも音楽を楽しめる可能性があります。



音楽の聴き取りは個人差がありますが、工夫次第で今より聴き取りを良くすることは可能だと思います。
ここではどう音楽と付き合っていくかを説明します。


音楽の聴き取りは強く印象に残っている曲を聴くことから始めるのが一番早いかもしれません。子供の頃に覚えた曲は体で覚えているので理解しやすいようです。
私も子供のころに聴いた曲を繰り返し聴くことで聴ける曲が広がりました。


テレビなどのスピーカーは音が拡散するため音楽が聴き取りにくいかもしれません。
最初はヘッドホンかオーディオ接続ケーブルを通して聴くのがお勧めです。
オーディオ接続ケーブルにすることで音質が飛躍的に向上したという方もいます。


歌詞は1度では聴き取れません。
1回か2回で諦めず、何度もしつこく聴くと聴き取れるようになることがあります。



人工内耳は音の高さの知覚が難しいといわれています。
私も最初は「ド」と「ミ」にあたる2音の高さが分かりませんでしたが、
今では半音の区別ができるようになってきています。
これまでの音楽の聴き取りやコクレア社のリハビリソフトを活用した成果だと思います。


このように工夫やリハビリをすれば聴こえは成長します。



私は人工内耳で会話を取り戻せました。
今では電話や音楽も取り戻しつつあり、生活の質(QOL)が飛躍的に向上しました。
人工内耳は私に想像以上の聴こえをもたらしてくれました。
このような素晴らしい聴こえを与えてくれたことに感謝しています。
このように人工内耳の技術は飛躍的に進歩しています。

ご清聴ありがとうございました。

2013年3月3日 耳の日の講演会にて発表

12 件のコメント:

タク さんのコメント...

詳細は読んでいませんが、理論派の滝さんらしい、しっかりと分かりやすい体験発表だと感じました。
会場に来た方達も納得されたのではないでしょうか。
自分の地域でもお願いしたいくらいです。
ありがとうございました。

さんのコメント...

タクさん、こんばんは

今までにこんな体験談見たことがないといってくださった方もおり、パワポの威力を感じました。
この体験談は自分自身のものだけでなく、先生、コクレア社員及び各人工内耳装用者ブログの意見やアイデアを得て作成しています。
ありがとうございました。

今回はシンプルイズベストを目指して要約しましたが、結果としてそれがよかったのかなと思います。

話すスピードも考える必要があり、発表の難しさを感じました。
次回もあれば頑張りたいと思います。

ぷーどる さんのコメント...

こんにちは。

体験発表、お疲れ様でした。


視覚からの情報って
健聴者相手でもやはり重要ですよね。
プレゼンの成果を大きく左右します。

シンプルイズベスト・・・本当に
すっきりうまくまとめてられていて、
とてもわかりやすいです。


次回の発表もまた頑張って下さいね♪



オレンジナース さんのコメント...

 改めて、体験談を読ませていただきました。分りやすいですね。
 「翼を下さい。」はいい曲ですよね。再び聞こえるようになって、感動の涙が出たのですね。
 
 スーパーへ行くと、今も音楽が聞こえるのでしょうか?私の耳では、何も聞こえません。昔はその時に流行っていた音楽がかかっていたように思います。

 聞こえたら教えてくださいね。

さんのコメント...

ぷーどるさん、こんばんは

ありがとうございました。
ぷーどるさんに分かりやすいといっていただけてとても嬉しいです。

聴こえることがすべてではないのですが、音を失ってしまった方々に再び音が聞こえる素晴らしさを知ってほしいなあと思います。

次回もあれば頑張りますね。

さんのコメント...

オレンジナースさん、こんばんは

再度見てくださってありがとうございます。
もし、あのときのまま聴けたらきっと涙を流さずにはいられないと思います。

ある装用者からお聴きしたのですが・・・

「TVの歌番で、昭和50年代が我が青春なのですが、涙を流して聴いていました。」

と聴いたときは胸を打たれました。

昔なつかしの音楽も、今の人工内耳なら聴ける可能性があるんじゃないかなあと思います。

店の音楽は周りの雑音がひどいので最初とてもとてもと思っていたんですが、不思議と聞き分けが出来てくるようになるんですね。
踊るぽんぽこりんが聴けたのは懐かしかったです。
もちろんすべてがきれいに聴こえるわけではないんですが、他に店のアナウンスなどいたるところに音があふれてるんだなあと人工内耳を装用して気付かされました。

ぷーどる さんのコメント...

滝さん、おはようございます。

再び聞こえる感動というのは、会話はもちろん一番かもしれませんが
音楽・・懐かしい音楽が聞こえる事は本当に感動ですね。

私も50年代青春真っ只中の歌、TV等で聞こえてくると鳥肌物で感動です。

知ってる曲はちゃんと聞こえるので、懐かしさがそのまま再現。有難い事ですね。

オレンジナースさんはじめまして。
スーパーってうるさいですが、3月が近づいてきたらお菓子コーナーで「灯りを付けましょぼんぼりに♪」とか流れるのが聞こえてきます。
お菓子コーナーではアンパンマンなんかもよく流れています。
お肉のところはなんだかジャンジャカ音楽が鳴っていますが
知らない歌なのでメロディーもよくわからなかったり・・。
そんな感じで色々なんですよ(^^)v

オレンジナース さんのコメント...

ぷーどるさん、初めまして。

やはり、スーパーは以前と同じ音楽が流れているんですね。昔は流行の曲やドラマの主題歌が流れていて、束の間の急速でしたが、いまや全く聞こえずに、買い物を済ませばそそくさと帰ります。

季節の局も流れていて、その時期に楽しめる音楽が懐かしいです。

オレンジナース さんのコメント...

急速→休息の間違いです。

さんのコメント...

ぷーどるさん、こんばんは

さすが分かりやすい表現ですね。
ありがとうございます。

お菓子コーナーではアンパンマンの曲が流れていることもあるのかフムフム。
今度スーパーに行くときは寄って聴いてみようと思います。

しん さんのコメント...

自分の聞こえって説明しにくいですよね。
それをパワポで視覚的に分かりやすくまとめてあるなあと改めて感じました。

「どれくらい聞こえるの?」と聞かれれば
「相手と場所とその時の体調によって異なる」と答えるのが、僕の場合は一番正しい気がしますが。

さんのコメント...

しんさん、こんばんは

自分の聴こえを表現するのは難しいですね。
また、自分の聴こえを伝えても相手は違った表現で受け止めている可能性があります。
以前、人工内耳の聴こえをうまく視覚化したブログがあって感心したものですが、今は閉鎖してしまったので、惜しいと思っています。

「どれくらい聞こえるの?」についてはしんさんと同じく僕も場所と体調に左右されるところも大きいと思います。
今、まさに体調が最悪の状態なのでそれを痛感しています(笑)